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カンドゥマケイブ@モルディブ [海のおもひで]


Photo@KandoomaCave(Moldives) -25m 12.Nov.2004

今回はちょっと怖いおもひでを。
(長いですよ)


(ダイビングドキュメンタリー風に)
あれは昨年の11月、モルジブ旅行のスクーバ最終日でのことでした。

前日、前々日と、我がままリクエストでココア(カンドゥマ)ティラで激流大物ダイビングを楽しんだ私は、最終日はゆっくりとマクロウオッチングがしたいと前日にガイドにリクエストしていました。

指定された午後のボートが出発する時間に行くと、ローカルのガイド氏曰く、ポイントを変更させてくれとのこと。どうやら午前中の潮が悪くて、午後に行く予定にしていたしていたポイントに行ってしまったらしい。まあ、そんな事もあるだろうとマクロレンズをダイビングセンターに置き、2つ返事でOKしてしまいました。今思えばここから既に何かがずれてきていたのだと思います。

向かったポイントはカンドゥマケイブ。
外海から内海に入ってくる潮にのってドリフトするポイントで、ケイブというより潮の流れにえぐられた大きなオーバーハングが続くポイントらしいです。
(たぶんコースが違うだけでココアコーナーとポイントは同じかも)

ボートにはガイド2人とイギリス人の男とチェコ人の新婚さんと私。
途中穏やかなポイントでガイド1人とイギリス人を落とし、我々はさらに外海を目指しました。
俺もここでも良かったのにとガイド氏に言うと「ここはつまらんよ」とのこと。

ボートはさらに進み、チャネルを出る直前の海面を見ると水が沸きあがってました。
すごいアップカレント....。
「すごいことになってるね」と言うと、「おまえはこういうところが好きなんだろ?」とニヤニヤしながらガイド氏。いや、まあ、嫌いじゃないけどさ、ここには入らないよ。笑
どうも前日までのダイビングで誤解されているらしい。

外海に出るとうねりというか波。
環礁の内と外とはすごい差があるんだなと改めて思った。
ボートは波を切って潮に逆らってよちよち走ります。

どうやらチャネルから離れた、うねりを避けた場所からエントリーするようです。
しばらくボートマンとガイドがエントリーポイントを探してました。
たぶんさっきイギリス人を落とした所がピックアップポイントで、ここからそこまで流れていくんだなと思ったが、あれから既に10分以上経っている。結構距離があるぞ。
やれやれ最後まで激流かと思いつつエントリーしました。

入ってみるとモルジブに来て最高の透明度、30mはありそう。
さすが外海、上げ潮。
一番にエントリーし、-10mのところで待っているとチェコ人の奥さん、ガイドの順で降りて来ました。
旦那がなかなか来ないなと思っていると、15mくらい先できょろきょろしている。
どうやらボートの反対側から下りて、しかも我々より深度が深い。
3人で気づくのを待つが、なかなか気づかない。
しばらくして逆の方向に泳ぎだしてしまったので、ガイド氏があわてて迎えに行った。
ようやく合流。
OKサインを交わし、チャネルの方向に深度を落としつつ進みました。
コーナーが見えてきたところから潮が早くなり、吸い込まれるようにチャネルに入りました。
-20m。

チャネルの中に入っても潮の速さは衰えませんでした。
左手に壁を見ながら流すのですが、ジョギングくらいの速さで景色が過ぎていきます。
壁には何もついていません。岩肌だけの荒涼とした風景です。
ときおり、ロウニンアジやグレイリーフシャークが現れる中、「すげー!」とガイド氏と笑いあいながら、ジェットコースターダイブを楽しんでいました。

なんとなく近くにあった岩を掴むと、強い衝撃があり、掴んだ岩がボコッと取れてしまいました。
ふと後ろを見ると、すぐ後ろに奥さんがいたのですが、旦那はまた離れています。
我々より深度が浅いようです。
気になって見ているとやはり我々と違う潮に乗っているらしく、差が開いていきます。
奥さんも気にしているようで、流れに逆らうように抵抗を始めました。

それまではガイド、私、奥さんでまとまっていたのですが、奥さんと私が旦那を気にし始めてからそれぞれ離れ始めました。
そして旦那の姿が、かすんで見えなくなってきた時が、私の我慢の限界でした。
(もしかしたらまだガイドからは旦那が見えていたのかも知れません。でも消えていく人影を見ていてほっとけなかったのです。)
ガイドに「掴むぞ」と合図を送り、ガイドがOKサインを出したのを確認して、流れから身を隠す大岩の影に滑り込みました。
ダイコンを見ると-33m。ダイブタイムはまだ10分くらいでしたが、ここにもそう長くはいられません。
ガイドの位置を確認しようと左手でマスクを抑え、右手で岩を掴み、後ろを振り向こうとするとマスクが浮いてきて振り向けません。
マスクのスカートから海水がジャブジャブ入ってきました。
視界の隅にガイドが同じように岩の陰に隠れているが見えたので、「やれやれ」と前を向くと奥さんが流れてきます。
とっさにホーンで合図して誘導すると、上手く影に入ってくれました。
笑いかけてみましたが、明らかにパニックを起こしかけています。
こんな時知り合いならまだ出来る事もあるんだろうけど、相手は外国人で女性です。
何かして逆効果だと最悪です。
どうしたもんかと笑いかけながら旦那が来るのを待っていると、すこし落ち着いてきた様子になってくれました。
しかし、今度は旦那が沖に離れて行くではありませんか。
違う早い流れに乗ってしまったようです。見る見る小さくなっていきます。

あ、やばいのかな?と思った時、隣にいた奥さんが旦那の方向にダッシュ!
仕方なく手を離し、流れに乗りながらその方向に近づいていくと、ガイドも追ってきました。
ようやく旦那に追いついた奥さん、しかし今度は二人で浮上を始めました...。
それを見たガイドが猛ダッシュで追いつき、何とか止めようとするのですが、3人でどんどん上がっていきます。
私は追いかけつつも浮上速度を守りゆっくり上がっていたので、3人からどんどん距離が開きとうとう見えなくなってしまいました。
自分の排気の泡で水面もどうなっているのかわからない状態です。
先ほどではないものの流れは依然としてあります、しかもここは安全な浮上ポイントではないはず。
ボートの上から見たアップカレントが脳裏を横切ります。

「このまま浮上速度を守っていたらはぐれるんじゃないか?」
「多少、減圧症のリスクを冒しても3人とはぐれない方がいいのでは?」

-10m~8mのところで流れが緩やかになり、上を見ると3人のフィンが見えました。
既に水面にいるようです。
ゆっくり流されながら-5mで安全停止をしていると、ふいに水面に持ち上げられました。
アップにつかまったようです。
ダイコンを見ると1分しか安全停止が出来ていません。
もう一度潜ろうかとも考えましたけど、とてもそんな気にはなれませんでした。
3人の方を見ると、マスクを外した奥さんがぐったりして、口元が血に染まってます。


Photo@KandoomaCave(Moldives) -20m 12.Nov.2004

近づいて見ると意識は有り、よく見ると口からではなく鼻から出血しているようでした。
ひとまず安心して4人でボートを待ち、乗り込みました。

4人で酸素を吸い、ダイブセンターに連絡を取りつつ、先に落としたイギリス人とガイドを拾いにボートを走らせます。
チェコ人の夫婦はガタガタ震えて、とても話が出来る状態ではありませんでした。
ガイド氏が「お前はゆっくり上がってきたから大丈夫だと思う...」と申し訳なさそうにいいました。

上がってきたガイドとイギリス人はボートの上の我々を見てびっくりしていました。
イギリス人:「何があったんだ?」
私:「潮が早くてパニックを起こしたらしい。-30から急浮上したんだよ。」
イギリス人:「俺が潜っていたところはそんなに流れなんてなかったぞ?あいつらは初心者なんだろ?」
ガイド氏:「あんたが入ったポイントは初心者向けのポイントだから流れて無かったんだよ。」
イギリス人:「え?おれは初心者なのか?」
ガイド氏:笑
私:「まあ、まあ」笑
お茶目なイギリス人でした。

その後のチェコ人夫婦ですが、夕食の時に見かけたときには元気になっていました。
奥さんは耳をひどく痛めたようでしたが、体調は問題ないとのこと。
よかった。
ダイビングが嫌になったかと聞くと、そんな事は無いとのこと。
それもよかった。

このとき嫁に「なんかあったの?」と聞かれましたが、「まあ、ちょっと」と口ごもってしまいました。
余計な心配をさせたくないですからね。

改めてダイコンのログを見てびっくり。
Max. : 33.2m
Ave. : 21.9m
Time : 16min

その日の夜は手のひらに違和感がありました。
正直減圧症も覚悟しましたが、しばらくするとなくなりました。
ほっ...。

今回の事故の原因は単純な理由だと思っています。
旦那がガイドと同じ水深を取らなかったことです。
いくら早い潮でもまとまって流れていけば問題ないわけですし、今回のダイビングの目的がまさに早い潮を楽しむことでした。
ガイド、バディと同じ水深を保つ事。
よく言われていることですが、大切な事ですね。

追記:日本語の表現がおかしいところがあったので直しました。(2005/10/26)


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コメント 11

Sara

怖いお話、ありがとうございました。
本当はこんな話が一番タメになるよね。
>ガイド、バディと同じ水深を保つ事。
>よく言われていることですが、大切な事ですね。
今週末に向けて、再度再度、肝に銘じておきます。
by Sara (2005-10-26 10:45) 

ray

ココアティラは私も何度か潜っています。
お話を読んでいて、乾期で大潮の時のことを思い出しました。
あそこは途中で止まろうなんて、なかなかできないポイントですものね。まさしく激流で飛んでいる感覚だったなーと、今でも思い出します。
あの辺のポイントはアップ・ダウンカレントが多く、始めてウォッシングマシーン体験したのもあの近辺のポイントでした。
初心者ではなくてよかったと思いつつも、内心心臓バクバクでした。
by ray (2005-10-26 18:37) 

sealion

経験の多さ、それも「怖い思い」をした数では絶対にかなわないなぁ。
by sealion (2005-10-26 20:56) 

のりたん

おぉぉぉ~!以前聞いたこの話。じっくり呼んでると
こっちまで心臓がバクバクしてくるね・・・
そうとうすごい流れなんだね・・・。
急浮上はほんとバクバクだよね・・・(>_<) 
のりたんも熱海の沈潜で30M付近からお客さんが急浮上した時は
ほんとうに心臓が口から出るほどバクバクでした・・・。
だって水面からはボートのエンジンがブルンブルン聞こえるし、
ダイコンはピーピー鳴りっぱなしだったし・・・(>_<) 
あっ。この時もきんちゃん一緒だったね(^^ゞ
by のりたん (2005-10-26 22:18) 

ju

きんちゃん、貴重な経験しましたねぇ;;;

西洋人って、自己責任って気持ちが強いのか、タフな人多いですよね。
日本人ならヘコタレたり、ブツブツ文句言って終わりそうなところ、「また挑戦するよ!」って明るく言っちゃうとこ何度も聞いたけど、精神的に強いわ。
by ju (2005-10-26 22:59) 

きんすけ

皆さん長い話を読んでいただいてありがとうございます。

<Sara さん
おお、神子元ですね?いいなぁ、今回はちょっと用事があっていけません。
そろそろハンマーも店じまいですね。
楽しんできてください!

<rayさん
ココアティラは衝撃的でした。
どこを取っても最高のポイントでした。
ここの「おもひで」カテにレポートがありますのでよかったら読んでください。
きっと「そうそうこんな感じ」って思ってもらえると思います。
モルジブは癒し系のイメージがありますが、実はハードな海ですよね。

<sealionさん
まあ、結局こういう体験が財産になるのかと思います。
でもたぶんsealionさんも同じ事くらいできると思う。

<のりちゃん
覚えてる。笑
そういえばこのとき初心者君が2人いて、2人とも急浮上したんだよ。
この後のりちゃんは「殺す気かぁ~!」ってめちゃめちゃ怒ってたよね。
俺はこれで絶対プロにはなりたくないって思ったもん。笑
のりちゃんはDMなりたてで、ヨッシーはまだプロコースに入る前。
2人とも今じゃ立派なイントラ様だ。懐かしいね。うんうん。
LOG見ると俺なんかこのとき14本だ。
初心者君とか言ってるけど、当時の彼らより本数が少ないド初心者だぞ。笑
そういえばこのときも「ここ航路だよな」と思いつつ1人でゆっくり上がってたな。
今思うとさ、ヤツ(メインのイントラ)はこの時、浮上ポイントを見失ってたよね。
わはは。

<juさん
あれ?この話してなかったっけ?
ほんと、なかなかこんなこと体験できませんよ。
正直チェコ人夫婦は助からないと思ったもの。
実は書いた後思い出したけど、チェコ人夫婦はドクターチェックされてた。
juさんもココアティラに入ったことあるんだよね。
いつか皆で行きたいね!
by きんすけ (2005-10-27 01:28) 

のりちゃん

あはは・・・。^_^;
だってBCの空気を抜いてあげてるのに気づけばドライにガンガンエアー入れてるし、慌ててドライのエアーも抜いてたら今度はBCに空気入れてるし・・・最後は両手を振り払って抜いたけどもう時既に遅し・・・。
どんどん近づく水面の恐怖(苦笑)

そっか・・・。この時きんちゃんもまだ14本だったのね^_^;
そんなことをみじんも感じさせないきんちゃんはさすがだ・・・。
30M付近からフリー浮上だもんね。よくできたね・・・。
今思えばこれも怖い怖いだね。。

完璧あればメインイントラが浮上ポイントを見失ってたね。
だって、あそこからの浮上はありえん!
by のりちゃん (2005-10-27 12:15) 

トラ子

す、すごい経験をいっぱいしてらっしゃるんですね(@。@)ヒー
安全停止や深度を合わせる事の大切さがヒシヒシと伝わりました。
これからは、もっと真面目に潜ります。
by トラ子 (2005-10-27 21:26) 

きんすけ

<トラ子さん
>これからは、もっと真面目に潜ります。
なんだか面白かったです。
わはは。
by きんすけ (2005-10-28 22:05) 

monthly-manatee

こわいですね・・・。無事でなによりです。
わたしもちょくちょく恐い体験しましたので、
安全ダイブできるようにって思ってます。
by monthly-manatee (2005-10-29 22:42) 

きんすけ

けして命がけでやる遊びではないので、安全を第一に考えたいですね。
(^^
by きんすけ (2005-10-30 12:28) 

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